M&Aのルールは会社法に
【会社法を抑えてM&Aを効率的に!】
M&A(Mergers and Acquisitions)合併と買収は、今や新規事業の運営をして行く上で重要な経営戦略の一つになっています。M&Aには、新設合併や吸収合併、事業譲渡、会社分割、株式取得などがあります。国内では事業譲渡や株式譲渡が一般的に採用されています。
これまでM&Aは、後継者不在や事業継続などの解決策として活用されて来ましたが、近年スタートアップの出口戦略の一環として活用されて来ています。これらを把握しておく事で、経営の選択肢としてM&Aを活用する事に繋がります。
【事業譲渡】
会社の事業を移転する方法で事業の全部または一部を譲渡することで事業の再編や新規事業への進出等の目的で行われる。
不採算事業の切り離しや、事業売却による資金調達といった「整理・売却」の活用もされます。
また他社の有望事業をピンポイントで「買収」し、自社事業を強化する目的でも用いられます。
特定の課題を切り離しつつ事業の売却価値を高める戦略的な手段としても活用されます。
会社法のポイント
契約の承認:467条Ⅰ①~③、株主総会決議:309条Ⅱ⑪、競業の禁止:21条、商号と責任:22条、詐害譲渡の債務履行請求:23条の2①、特別決議(設立後2年以内の財産):467条1項5号
【株式譲渡】
株主が保有株式を譲渡し、経営権・議決権を移す行為。M&Aで最もシンプルかつ利用頻度が高い手法です。
一般的な効果として法人格が維持されるため、会社名義のまま事業継続が可能。資産や契約の移転も不要で、従業員や取引先・許認可も引き継がれます。
主な活用場面では、後継者不在の中小企業の承継や、スタートアップの売却手段。買収側は新市場参入やシェア拡大を目的に利用します。
戦略的な活用では、大手企業がスタートアップの株式を取得するM&A、非上場企業を買収して技術やブランドを獲得、海外進出の足掛かりとして現地法人の株式取得など。
注意点として、譲渡契約には「表明保証」「競業避止」「秘密保持」などの条項を明記。譲渡制限がある場合は、取締役会や株主総会の承認が必要です。
デューデリジェンスでは法務・財務・税務の確認が不可欠で、簿外債務や訴訟リスクの洗い出しが不可欠です。
会社法のポイント
株式譲渡:127条、譲渡対抗要件:130条、名義書換請求:133条、承認(制限付き株式):136条、不承認時の買取:140条、承認みなし:145条
【合併】
2つ以上の会社が契約によって1つの会社と合体する事。
当事会社の1つが存続して他が消滅する形で会社を吸収する(吸収合併)と、当事会社が消滅して新しい会社を設立する(新設合併)。
合併の主な目的は、事業統合によるコスト削減や技術・顧客基盤の共有でシナジー効果を生み出し、市場競争力を強化する。
これにより、事業規模を拡大し、新たな市場への参入や多角化を効率的に進めることを期待します。
会社法のポイント
合併契約締結:748条、合併契約事項:749条、合併効力発生日:749条1項6号、法定記載事項:749条1項、株特別決議:783条(消滅会社)、795条(存続会社)、804条(新設合併)、債権者異議:789条、合併無効訴訟:828条1項7号
【会社分割:吸収分割・新設分割】
特定の事業部門を他社に承継(吸収)させるか、新会社設立により分離する方法。
これにより、事業ごとの経営責任を明確化にし、意思決定のスピード化や効率的な資源配分により事業競争力の強化が期待が出来ます。
また、不採算部門の切り離しや、成長事業への集中といった戦略的な再編を可能にする役割を持ちます。
会社法のポイント
分割契約締結:757条、分割契約内容:758条、分割計画書作成:762条、債権者異議(分割会社):789条1項、債権者保護:789条2項、株式移転効力発生日:774条